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Bloody Mary 別館

トムラウシへ行こう Part.6

夜間出発の上に時間が押したため、一切の写真なし。

11/5 トムラウシ復路

2:00 起床

昨日、登山口で前泊したときは、U.L. ダウンインナージャケットと U.L. スーパーストレッチダウンハガー #0 で眠り、程よい暖かさを得られた。

しかし、今回は体が冷え切っていたので、少しでも暖を取りたくてシュラフカバーを使っていた。結果、非常に暑い。シュラフをばたつかせて熱を放射させるという技が使えず、どうやっても暑い。

体に熱が篭ったせいで、起きたときにぼーっとなった。「あれ、やっちゃったか?」と思った。テント設営で体を冷やしたためなのか、単にシュラフが暑かったせいなのか不明だが、熱特有のだるさと頭痛があった。こんなところで風邪でも引いた日には、救助を呼ぶ羽目になってしまう。とりあえず EVE を 1 錠飲んでおいた。

相変わらず風は強く、風向きとは反対方向に設置した入り口にも、若干のすきま風が入ってくる。ドマドームは、インナーテントをフルクローズしても下に隙間があるので、通気性が確保されているのだ。

ドマドームに感心したのは、土間との仕切りをクローズさせると、寝室までは風が侵入しないことだ。おかげで暖かい一夜を過ごせた。暑過ぎたくらいだが。

ここで勘違いしてはいけないのは、テントの気温は、外気温とそれほどかわらないということだ。テントの役割は風を防ぐこと。それだけで、暖はシュラフなどで取る。今回はオーバースペックだったが、ロースペックで死ぬよりいいだろう。

一方、ドマドームにはポールが 3 本あるので、強風下での設営に手間取る。こうなると吊り下げ式もいいなぁ。ダンロップの VL シリーズ買おうかなぁとか考えつつ、土間でお湯を沸かして、ナルゲンに小分けしたネスカフェ・ゴールドブレンドのインスタント珈琲を味わう。

うむ、美味い。さらにお湯を沸かし、マグに 7 割ほどの珈琲を作っておく。

温度計を見ると -8℃ くらいで、思ったほど寒くは感じない。夕方の時点でその温度だったのだが。寝室の隔壁を開けたせいで、土間の温度が上がったかな?

強風下の行動ではインナー、フリース、レインウェアの組み合わせだけでは寒すぎることが分かったので、フリースの上にこのままダウンジャケットを着込んで下山することにした。

ザックの下の 1 気室をテント用のスペースにするので、上の方にシュラフ、マット等をしまっていく。

水もペットボトル 500m とマグの分を残して全て捨てる。切れたらコマドリ沢で補給すればいいし。

最後にテントをたたむ。フライに結露していた水分が、さらさらと流れ落ちた。これは寒い。

3:00 南沼指定キャンプ地出発

いざ、出発。水や食料が減ったので、ザックを背負うとかなり身軽に感じられる。

昨日はあれほど美しかった星空はもう見られない。おそらく雲が出ているのだろう。ヘッドランプの光だけでは暗すぎて、それすら定かではないが。雪も降ったし、常識的に考えてそうなのだろう。

風も強くなっている。テントの外は、軽く雪が積もっている。インナーダウンを着たのは正解だった。

ヘッドランプを使い、暗い夜道を高度計、コンパス、等高線地図を頼りに進んでいく。まずはトムラウシ公園目指す。しかし、積もった雪で目印は消え、洒落にならない状況だ。

昨日の自分の足跡や、岩に書かれたペンキを頼りに進むものの、笑ってしまうほど道が分からない。

5 分進んでは地図を出して位置を確認する。それでも迷う。

ガレ場の急坂では、 50m 以上も下りすぎて、また登ったのが悲しかった。

また、ある場所では斜面の反対側に回りこんでしまい、途方にくれたりした。これもまた登って正しいルートを選択した。

このように、トムラウシ公園に辿り着くまでに、何度も道をロストした。いくら注意深く見たって、本当に分からないのだ。高倍率の等高線地図が必要だと感じたが、後の祭り。

積雪時には完全に目印が消えるから、間違いなく遭難するな。

4:25 トムラウシ公園

トムラウシ公園に着いた。

地面が見え始めて、登山道が判別できるようになってきた。

登山道の横にロープが張ってあるので、迷う心配はしなくていいはずなのだが、先ほど迷った恐怖感があるので、地図を見ながら慎重に進む。

下りでは、南沼指定キャンプ地~トムラウシ公園までが鬼門だった。積雪時には迷うので、非常に気をつけられたし。

逆に登りでは、前トム平~トムラウシ公園で迷った。

5:30 前トム平

標高 1,760 m の前トム平から、 1,380 m のコマドリ沢までは、長いガレ場の下りが続く。迷わなくていいが、膝が痛い。夜も明けて暑くなって来たので、ダウンを脱いだ。

6:30 コマドリ沢

一番下まで下った。ここから 1,480 m まで登らなければならないのだ。急な登りが体力を奪う。

100m 登るのに 40 分かかった。

8:15 カムイ天井

倒木の洗礼を回避して、標高 1,300 m まで、ひたすらにゆるやかな下り。膝が痛い。

9:10 短縮コース分岐

標高 1,040 m 。ようやくここまで辿り着いた。

西から来たので、東へ進めばいいんだな。コンパスを見ると、東はこのまま真っ直ぐ進めばいい。

そして最後の最後で痛恨のミス。

短縮コースに戻るためには、分岐を左へ曲がる必要があった。しかし私は、コンパスを見ながら真っ直ぐ進んでしまったのだ。

看板を良く見ていれば分かったのに。もしくは地図を道の状況と照らし合わせれば、 T 字路だから北に続く道なんかないと分かって、じっくり看板を見ただろうに。まさかコンパスの方角が違っていようとは……

コンパスは、たまに引っかかっていることがあって、揺すってやることで正しい方角を示す場合がある。

これは登り方面から撮った写真。

そうとは知らず、本ルートへの道を歩まされた私は、東大雪荘を目指して下り始めた。

雪は夜更け過ぎに雨に変わっていた。道はぬかるみ始め、綺麗だった新品のトレッキングブーツを汚してくれた。

またしても上り坂になった。

「トムラウシは最後まで飽きさせないなぁ」と言っていられるのも、間違いに気づくまでだ。

本来なら、こんな坂はなかったのに。

「あれ、こんなところにもう 1 本倒木あったっけ? ザック下ろしてくぐるか」

「南東に進まなければならないのに、なんか南西に進んでいるような。でも左右にうねってるし、南東にも進んでいるから大丈夫だよな」

この時点で気持ち悪さを感じつつも、まだ迷っていた。

「もう少し進めば短縮コースに出るって」

「今引き返したとして、それが間違ってたらフェリーの搭乗に間に合わねーし」

「もう少し様子を見るべきだな」

そしてついに高度が短縮コースの標高 960m を下回っても、「もうちょっとだろう」と言い聞かせ、標高 920m 地点に達したところで、「これは間違えたかもしれない」と 8 割方確信するに至った。

遅いわ。

思い返せば、分岐点では、北と思われた方角に道がないはずなのに、ないはずの道があったことに気がつくべきだった。

深夜に出発して稼いだ時間も、トムラウシ公園で迷子になっていた時間と、痛みを訴え続ける膝、今回のミスとで貯金を使い果たし、すでに時間は押しまくっている。そこへこの致命的なミスである。

しかも、である。ダートは思いのほか時間を喰うのだ。

「やっちゃったなぁ」と半ば諦めモードで来た道を戻り始めた。

それでも時間に間に合わせようと急ぐのが健気だ。家族の療養のために同僚が休むかもしれないので、出勤しなければならないのだ。

急いだせいで肩で呼吸するわ、喉が渇くは、水はもうないわ。マグの珈琲は冷たくなっていて、それで少しだけ喉の渇きを癒せた。しかし、水分は綺麗さっぱりない。

「ポカリポカリ」

ゾンビのように水分を求めて進む。歩き方もゾンビと大差ない。

80 分後、ようやく分岐点に戻ってきた。

看板を良く見ると、短い矢印の方向が短縮コースへの道になっていた。

分かりづらいわ!

逆ギレして走り始めた。 10m ほどで無理を悟った。大人しく下山しよう。

20 分後の 11:00 に MR-S を目にしたとき、ようやく終わったと思えた。

その後は特筆すべきこともなく、仮眠もできないので、眠気をこらえながら苫小牧港に着いたのが 16:50 。搭乗手続き終了の 10 分前である。

フェリーでは速攻風呂に入り、寝た。

こうして私の初登山は終わりを告げた。

教訓

  • 野生動物の存在。鉈などの武器必須。ハバネロ買って来て、スプレー自作するか。
  • 病気や怪我の怖さ。単独行動は危険。薬の携帯は必須。
  • 時間の読めなさ。迷子になったり、体力的に無理だったり、計画通りに進めるとは限らない。予備日を 1 日持っておきたい。
  • 細引きの使い方。フットプリントとテント本体を一緒に結んでいると、強風下でたたむときに、解いた紐をまたシートだけに結び直し、固定しなければならない。二重の輪を作って、どちらも単独で結べるように結び方を工夫すべき。
  • ビール不要。冬にビールはいらん。結局飲まなかったし。ただのデッドウェイトだろ。持って行くなら度数の高い梅酒あたりでいいかな。
  • 登山の良さって、何だろう? 理解できてないよw

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