鯛のその後
鯛を捌く
鯛を水洗いしてビニール袋の中に入れる。包丁の背でバリバリと鱗を取る。身の方までささくれちゃうんじゃないかと思うほど取れないが、がんばって取る。身は崩れなかった。鱗を素揚げで食べられるらしいので、一応、クッキングタオルを敷いたタッパーに保存。
鯛の頭からエラを取るために、エラの部分から包丁を入れる。左右ともにやるが、なかなか取れない。頭を落としてからとることにして、まずは内臓を処理する。
腹を掻っ捌いて内臓を取りだす。腹の左右にオレンジ色の卵を抱いていた。鯛の子と呼ばれるらしい。焼いて食べることにした。あとは肝を水に浸して血抜きして、酒で洗ってキッチンペーパーで保存した。肝の処理は、この方法が正しいのかどうかも不明。食べる予定はないのだが…
鯛は捨てるところがないというからやっているが、私は正直、内臓は食べられない。残りの内臓はそのままビニール袋に包んでダスト。ところが、翌日にすごい匂いになってしまった。友人曰く、冷凍してゴミに出せ、とのこと。
頭を落としてエラを取る。もらった未使用の歯ブラシが何個もあるので、それを使うことにして、ゴシゴシと血合いを取り除いた。血合いの部分は丁寧に処理すること。
残る胴体は三枚におろす。背骨の部分に包丁を入れ、出てきた血合いを丁寧に取り除く。その後でおろす。左側の半身は上手くいったが、右半分は身がごっそり背骨の方に持っていかれた。まあ、そぎ取るなりして食べるか… 半身にした部分からハラスを切り落とし、さらに残りに包丁を入れて柵にする。柵から皮をそいで完成。かなり食べ応えがありそうだ。どうせ一人じゃ食えないので、薄くなった半身を友人へ、柵はいつもの上司と可愛らしい上司へ。
背骨の部分はあら汁にできそうだ。数日以内に食べないと腐っちゃうので、冷凍庫へ保存する。次は頭やひれなど、あらを処理する。
あらの下処理
頭からは良い出汁が取れるらしい。やってみることにした。臭みを取るため、念入りに下処理を行うとのこと。
まず、あらに熱湯をまんべんなくかけて表面を白く霜降り状態にする。
次に、霜降りになったあらを氷水に入れ、血合いや取りきれなかった鱗を丁寧に取り除く。三枚におろす前に、念入りに鱗取りをしたつもりだったが、手で触れてみると頭の上の部分やヒレの周りに結構残っていた。
霜降り状態のあらから、手で鱗を取り除く。霜降りになったあらからは、簡単に鱗が取れるのである。包丁の背でバリバリ取っていたのが嘘のようだ。
手で鱗を取っていると、突然総毛だった。両腕から首筋にかけて鳥肌が立っている。
おや? なんで?
今までの人生で意識したことはなかったが、私は鱗取りが苦手らしい。そういえば、包丁の背で鱗を取っているときも、若干鳥肌気味だった。道具を使っている分にはまだ大丈夫だったが、実際に手で触り、鱗を取る感触に、生理的嫌悪感が限界を超えたらしい。
なぜこんな感情を抱くのかは自分でも分からない。今、日焼けした肌が剥けているから、鯛に自分を重ねて気色悪くなっている、というのはあるかもしれない。冷静な自分は、情けないぞと呆れる一方で、これはもっと根の深い、幼児期の体験とか、もしかすると原初的な恐怖じゃないだろうか。
グロテスクなものが嫌いな私だが、魚の内蔵を取っているときだってこれほどの嫌悪感はなかった。そしてよくよく思い出して見ると、私は細かい(小さい)ものが密集しているなにかに、嫌悪感を抱くことがあるのだった。例えば果物の皮にびっしりと凹凸がついているものとか。何でだろう。小さな虫を連想しているからか? 良く分からない。
とにかく命を無駄にすまいという 9 割の義務感と、美味しいご飯が食べたいという 1 割の期待に支えられて、すべてのあらの鱗取りを終えた。真鯛を釣ってきたのに、家ではカップめんしか食べていないのはどういうわけだと小一時間略。親指で鱗をなぞる度に新しい鳥肌ができるので、肉体から精神を遊離させ、肉体に処理をオートでやらせるイメージだ。ガリレオ 2 話に出てくる小学生か。
水を張った鍋にあらを入れ、酒少々、醤油少々を入れ、火にかける。沸騰させず、丁寧に灰汁をすくったところでギブアップ。鍋ごと冷蔵庫に入れて、あとは明日やることにした。
それから 2 時間経っても、時折思い出したかのように鳥肌が立つ。翌日になっても、この記事を書いているだけで鳥肌が立つ。トラウマになった。もう二度と鱗取りはできないだろう。とか言いつつ 3 日後にはすべてを忘れて、また鯛釣り行きてーと言っている自分に 1 ペソ。
忘れっぽいって言うのは意外に長所だよね。
とてつもないプラス思考。
鯛めし
翌日の話ですが、面倒なのでまとめて投稿しています。
米を研いで、ざるで 30 分ほど水切り。
冷蔵庫に入れた鍋はゼリー状の煮こごりになっていた。ちょっとだけ ( 常温まで ) 温めると水状に戻る。あら ( 頭とハラスの部分 ) は別の皿に取り分け、ざるとキッチンタオルで出汁を漉す。 10cm 程度の昆布を洗って出汁に入れ、沸騰直前まで強火で火にかける。出汁は沸騰させないこと。また、昆布は沸騰前に必ず引き上げること。せっかくの出汁が海草臭くなってしまう。
炊飯器に米 3 合と、冷ました出汁を通常の水分量までいれる。あらも入れる。このまま炊いてもいいのかもしれないが、一応 30 分ほど浸しておいた。
米を炊く間に、フライパンで白胡麻を炒めた。もしかすると、白胡麻は炒めずそのまま鯛めしに振りかけてもいいのかもしれない。
炊き上がったらあらを別の皿に取り分け、丁寧に身をほぐす。時間がかかるので、ご飯が固まらないよう、しゃもじで混ぜておいた方が良いだろう。なお、あらと言っても、元が 60cm 近い鯛である。身の部分も半端な量ではない。骨は一片たりとも入らないようにして、ほぐした身を炊飯器に戻す。なお、目玉はグロテスクすぎるので遠慮させていただく。かき混ぜて出来上がり。
ガルプ ( 釣り用のワーム。酢イカのかほり… ) 用に買って、各サイズ選り取りみどりのスクリュートップキーパーに保存、速冷蔵庫へ。 500ml、 750ml、 1200ml の容器が何個もあって、キッチンの場所をとることこの上ない。ちなみにスクリュートップキーパーは蓋の閉め方に癖があり、下手に閉めると蓋が外れてしまう。そういう不確定なものに、あのガルプを入れる気にはならないので、現在はナルゲン広口丸形ボトル125ml ( \190 ) に液ごと入れている。何度も使ったが、液漏れしていない。さすがナルゲンである。しかし、縦長容器は取り出しづらいので、広口サイズが欲しい。そのうちナルゲン広口ジャー 60ml を買おうかと思っている。半分の容量のくせに \260 もするけど。
ともあれ、スクリュートップキーパーが始めて役に立って良かった。とか書くとけなしているようだが、キッチン用品として見れば普通に使える。多く取りすぎた出汁も、 STK で冷凍保存できた。もともと規格外の使い方をしようとしている方が悪いのである。
茶碗に盛り付け、白胡麻を振りかけて完成。
皮のポン酢和え
柵にするときに取った皮は、茹でてから冷水に取り、ポン酢であえる。
刺身ではなく焼いた
生の魚や肉が食えないので、柵の一部を焼いた。鯛の子も焼いた。
またボケてしまったか… F4.5 くらいで撮れば良かった。
見かけは質素、実は豪華、その名は魚の王様、鯛 ( コナン風に ) 。